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遠州と倉敷

先日ご紹介した、ours dining様のエプロン。

今回は制作に使用した二つの生地について少し詳しくご紹介します。

一つは、遠州でつくられた25番手の天日干しリネン。

もう一つは、岡山で見つけたデッドストックの、ヒッコリーストライプのヘリンボーンです。

色も柄も、触ったときの質感も大きく異なる二つの生地ですが

どちらにも共通していたのは、均一すぎない表情と使い込んだ先も楽しめることです。

遠州の25番手、天日干しリネン

まず一つ目は

ヨーロッパ産リネンの25番手糸を使って、静岡県西部の遠州にて製織・染色が行われたリネンです。

リネンとは、フラックスと呼ばれる植物の茎から採れる繊維を原料とした麻の一種。

一般的に「麻」と呼ばれる素材には、リネンのほかにラミーやヘンプなどがありますが、それぞれ原料となる植物も、繊維の性質も異なります。

リネンは吸水性が高く、乾きやすく、使い込むほど生地が馴染んでいく素材です。

今回使用したものは「25番手」の糸で織られています。

番手とは、簡単に言えば糸の太さを表すための単位です。

数字だけでは少し想像しにくいのですが、今回の25番手は

薄く軽いシャツ地のようなリネンよりもしっかりとした存在感で、厚手のキャンバスほど硬く重くはない。

エプロンとして身体に掛けたときに程度よく形を残し、それでいて動きを妨げないような

ちょうどいい塩梅の厚みです。

そして、この生地の特徴をもう一つつくっているのが「天日干し」という仕上げです。

効率よく均一に仕上げることを優先するのではなく、洗いをかけた生地を自然に近い状態で乾燥させることで

生地の表面に細かな皺やふくらみが残ります。

今回の写真でも、光の当たり方によって表面に細かな陰影が生まれているのが分かります。

新品でありながら、どこか少し使い込まれたような柔らかな表情がある。

均一で滑らかな生地とは違い、場所によって微妙に見え方が変わるところも、このリネンを選んだ理由の一つでした。

岡山のデッドストック、ヒッコリーストライプ

もう一つのエプロンには、岡山で見つけた国産のデッドストック生地を使用しました。

白を基調に、ネイビーの細いストライプ。

いわゆるヒッコリーストライプと呼ばれる柄です。

ヒッコリーストライプは、古くからワークウェアと結びつきの強い柄です。

オーバーオールやジャケットなど、働くための衣服に使われてきた背景を持ち、現在でもワークウェアを象徴する柄の一つとして残っています。

ただ、今回の生地を近くで見ると、単純なストライプではありません。

生地そのものがヘリンボーンで織られています。

ヘリンボーンは綾織の一種で

斜めに走る織り目の方向を一定の間隔で反転させることで、V字が連続するような模様をつくる織り方です。

日本では「杉綾」とも呼ばれています。

遠くから見れば、白とネイビーのすっきりとしたストライプ。

近づいて見ると細かなヘリンボーンの織り柄が見えてきます。

柄と織りという二つの構造が重なることで、シンプルなストライプよりも奥行きのある生地になっています。

生地を波打たせて光を当てると、斜めに走る織り目が光を拾い、同じ白い部分の中でも明暗が変化します。

岡山という産地

岡山、特に県南部には、デニムをはじめとした丈夫な綿織物やワークウェアの生産に関わってきた地域があります。

今回の生地も、そうしたワークウェアとの相性を自然と感じさせる一枚でした。

そして「デッドストック」であることも、この生地を選んだ理由です。

デッドストックとは、過去につくられながら使われずに残っていた在庫のこと。

新しく同じものを注文して織ってもらうことのできる定番生地とは違い、使い切れば基本的にはそこで終わります。

いつ、どのような用途を想定してつくられた生地なのか、そこは知ることの出来ない部分です。

ただ、その少し不明瞭な背景も含めて、現在残っている生地から何をつくるかを考えることには

新しい生地を一から選ぶのとは違った面白さがあります。

料理をする場所で使い続けるもの

ours dining様のエプロンを考えるうえで、どちらの生地にも共通して求めたのは

最初から完成されすぎていないことでした。

リネンには、洗うことでさらに柔らかくなっていく変化があります。

ヒッコリーストライプの生地にも、繰り返し着用し洗濯することで生まれる皺や擦れがあります。

料理をする。

洗う。

乾かす。

また身につける。

エプロンは、そうしたことを何度も繰り返しながら使う道具でもあります。

新品の状態だけを見るのではなく、何年か使ったときに

その人やその場所の時間で育つ、そんな面白さが大切だと思っています。

今回選んだ二つの生地には、そんな変化を受け止められる土台があります。

遠州の天日干しリネンと、岡山に残っていたヒッコリーストライプのヘリンボーン。

異なる土地でつくられた二つの生地を是非、店頭で触ってみてください。